株式投資基礎 資産項目の異常な増加に注意する!!
投資CFの大きな赤字が続いている場合について考えていきます。
特に、投資CFが営業CFの黒字を超えるような額の赤字を続けている場合には注意が必要です。
「株式投資基礎 資産項目の異常な増加に注意する!!」
1.投資CFのマイナス理由を確認する
投資CFが大きな赤字ということは、固定資産の何かを大きく増やしているということなので、貸借対照表の資産の部を見てみるとよいでしょう。
また、決算短信の投資CFに関するコメントも読んでみます。
設備投資や企業買収などをしたのなら、その理由が納得できるものなのか考えます。
また、そのほかに資産項目が以上に膨らんでいて、その理由も不明なら粉飾決算も考えに入れてかなり警戒する必要があります。
2.バランスが悪く感じたら何か異常が起きているかも
ゼンテック・テクノロジー(4296)の例で見ていきましょう。
同社はかつて家電や携帯電話などのドフトウェア開発のベンチャー企業として注目を集めていました。
成長期待により05年から06年に株価は急上昇しています。
絶頂期の06年3月期について、
売上は38%増の78億円
営業利益は342%増加の5億5千万円
と、素晴らしく伸びています。
そこで今度は営業CFを見るとプラスから30憶円と、一見良さそうな感じです。
しかし、営業CFは営業利益の0.6倍から1倍程度なのが普通です。
同社の営業CFはその枠を大きく超えて不自然に多い気がします。
もっと不自然なのは、投資CFが20億円、51億円と2年連続で巨額の赤字になっている点です。
そこで、この会社の不自然さは何なのかを投資CFの原因を探ることで追及します。
3.貸借対照表の確認
貸借対照表の資産の部を確認したところ、
投資有価証券が48億円増え、
これが投資CF大赤字の1つの原因でした。
ベンチャー企業に対する投資を始めたような説明が決算短信にありましたが、実態がよくわかりません。
本業と関係なさそうなよくわからない資産のために巨額の現金が出て行っているのなら、不信感を持たざるを得ません。
4.「ソフトウェア」は粉飾決算の温床になりやすい
ソフトウェア勘定も、15億円から27億円と12億円増えていました。
ソフトウェアは形が見えづらく、特に開発中のものとなると外部の人間にはほとんど実態が分かりません。
また、ソフトウェアの評価額には、それを開発するために費やした人件費や諸経費などを反映させることができます。
そうすると、そうした諸々のコストは貸借対照表に資産として載ってしまい、その年の損益計算書で費用として差し引かなくても済んでしまします。
その分資産は増え、利益もかさ上げされて計算されます。
見かけは収益力もアップしたように見えます。
もちろん、ソフトウェアを適正に評価してそれを計上している会社がほとんどでしょうが、この項目が不自然に膨らんでいるケースでは、実態が見えづらいことをいいことに会計操作している可能性も考えられます。
なお、人件費などの多くを「ソフトウェア」の項目に入れれば、それが投資CFの赤字となって表れます。
固定資産の増加のために使った費用が、「投資費用」となるからです。
この会社は翌年、翌々年と売上や利益を拡大させますが、投資CFの大赤字が続き、翌年からは営業CFも大赤字に転落して大赤字が続くようになりました。
売上債権の増加が主因です。
その後、同社は粉飾決算していたことが発覚し、09年には上場廃止になりました。
やはり、ソフトウェアの急増をはじめとして、決算短信の節々に見える不自然な動きは会計操作をしていたことが原因だったようです。