株式投資基礎 のれん償却費に注目して真の収益力を計算する!!
「株式投資基礎 のれん償却費に注目して真の収益力を計算する!!」
1.大型買収した企業はPERが見かけ上高くなる
買収戦略で成長する企業の場合、高いPERを維持したまま株価が上がってしまうことがよくあります。
しかし、企業買収した企業では、「実は実質的なPERは低い」という場合も多く、割安かどうかを判断するには、実質的なPERの再計算が必要になります。
ここでカギを握るのは「のれん償却費」です。
「のれん償却費」は企業を買収したときに発生する”つじつま合わせ”です。
これが経常利益を計算する途中で利益から差し引かれるので、その分だけ実力よりも経常利益は少なくなり、最終的には実力より低い1株益になってしまいます。
のれん償却費が大きい場合には1株益やPERに大きな影響を及ぼしますから、計算しなおさなければなりません。
2.ソフトバンクはなぜ上昇スタートしたのか
ソフトバンクの例を使って説明します。
09年3月期の決算短信を見ていきましょう。
この決算短信を発表した時点からソフトバンクの株価は順調な上昇を始めました。
本業の収益力を示す営業利益は、予想値を含めて、
3243億円→3591億円→4200憶円と順調に拡大しています。
これが好感されたと思われますが、この時の株価は1500円、1株益は約40円でPERは38倍と高く、とても割安とは言えません。
しかし、ソフトバンクは携帯電話会社を巨額な費用で買収していますから、かなり大きなのれん償却費が生じているのはずです。
3.キャッシュフロー計算書でのれん償却費を確認する
キャッシュフロー計算書には次のようにあります。
・のれん償却費 611億円
損益計算書には次のようにあります。
・経常利益 2257億円
・税引き前利益 1073億円
・1株益 40円
したがって、
・真の経常利益は2257億円+611億円=2868億円
・真の経常利益の倍数は、2868億円÷1073億円=2.7倍
・真の1株益は、40円×2.7倍=108円
ですから、この時の株価は約1500円でしたからPERは15倍以下だったということになります。
4.「負ののれん」の場合はその分差し引いて考える
ところでまれに「負ののれん償却費」が計上されていることがあります。
これは「のれん償却費の逆で」合併等によって差益が出てしまい、それを毎年にわたって利益計上していくものです。
「負ののれん償却費」がある場合、経常利益からその額を差し引いて「真の1株益」「実質的なPER」を計算します。